出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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感覚器系執筆者:浜松大学健康プロデュース学部心身マネジメント学科教授 竹内修二

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目のつくりとはたらき

 視覚器は眼球と、眼瞼、結膜、眼筋、涙器などの副眼器からなっています。

 眼球は左右の眼窩の中におさめられ、前方は眼瞼で、後方は眼窩脂肪体で保護され、視神経によって脳とつながっています。眼球壁は外膜、中膜、内膜の3枚の膜からなっており、内部には水晶体、硝子体、眼房水が入っています。

眼球水平断(右側)

外膜…眼球線維膜で眼球全体を包み、前方6分の1が無色透明な角膜、後方6分の5が白目の部分で強膜となります。

中膜…眼球血管膜で、後方の脈絡膜(ぶどう膜)と、前方の毛様体と虹彩からなります。

内膜…色素上皮層と網膜からなり、網膜は眼球壁の最内層で、眼球後部のやや内側で視神経と連なります。

水晶体…両凸レンズ状で、毛様体に連結されています。毛様体は水晶体の厚さの調節、つまり遠近調節に関係します。虹彩は毛様体よりおこり、水晶体の前を縁どり光量調節を行います。

硝子体…水晶体と網膜との間のゼリー状組織でその90%は水分です。

結膜…眼瞼の内面と眼球の表面をおおう結膜があります。

眼筋…上下左右に眼球を動かすため主に後方を走り、上直筋や内側直筋といった6種類の筋からなります。

眼筋

耳のつくりとはたらき、音の伝わり方

 耳は聴覚と体の平衡感覚を司る器官で、外耳、中耳、内耳からなります。

耳の前頭断(平衡聴覚器)

外耳…集音器の役割で弾性軟骨からなる耳介と外耳孔に始まり、伝音器となる長さ2・5~3cmの外耳道からなります。外耳道内の皮膚にはアポクリン腺(耳道腺)があります。

中耳…外耳道から入ってきた音波を骨振動に変えて内耳に伝えるはたらきを持ち、鼓膜、鼓室、耳管からなります。鼓室内には3つの耳小骨があり、ツチ骨にて鼓膜に付着し、キヌタ骨、アブミ骨が前庭窓をふさいで内耳に連なります。

内耳…側頭骨錐体内にある平衡聴覚器の主要部で、骨迷路と膜迷路からなります。

骨迷路と膜迷路

 骨迷路は中央部に前庭、前方に蝸牛、後方に骨半規管が連なり、膜迷路は前庭中の球形嚢と卵形嚢、骨半規管中の膜半規管、蝸牛中の蝸牛管からなっています。

 前庭と骨半規管内には平衡感覚器官が、蝸牛管には聴覚器の本体ラセン器(コルチ器)があります。

舌の役割とつくり、味の感じ方

 舌は味覚器としての役割のほか、食物を唾液と混ぜ合わせて消化を助けたり、飲み込むのを助けるはたらきがあります。

 舌には糸状乳頭、茸状乳頭、葉状乳頭、有郭乳頭など4種の舌乳頭があります。

舌の背面

 味を感じる味蕾は味細胞の集まりで、これは舌だけでなく軟口蓋、口蓋垂、咽頭にも分布しますが、大部分は舌乳頭である茸状乳頭、有郭乳頭、葉状乳頭にあります。

味蕾

 味の種類は多様ですが、甘味、苦味、酸味、塩味の4つの基本味と、さらにうま味の混合からなっています。4種の味は舌のどこでも感じますが、部位により量的な差があり、苦味は舌根、酸味は舌縁、甘味と塩味は舌尖で主に感じられます。

 舌の有郭乳頭、葉状乳頭、茸状乳頭にある味蕾の味細胞が科学物質により刺激されると、舌神経、舌咽神経の感覚枝により大脳の味覚中枢に伝えられ、味を感じます。

鼻のつくりとはたらき

 鼻は外鼻と鼻腔からなり、気道の入口になっています。鼻腔内は鼻中隔によって左右に分けられています。鼻腔周囲の骨中の空洞を副鼻腔といい、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞、篩骨洞の4種類が存在しています。これらの空洞の壁は粘膜におおわれており、鼻腔内の粘膜と副鼻腔内の粘膜とは続いています。

副鼻腔の投影

 また、左右それぞれの鼻の中は外側の壁からひさし状の骨が張り出しており、その張り出しを上鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介といい、それらの間の空気の通り道を上鼻道、中鼻道、下鼻道といいます。下鼻道には内眼角(目頭)から通じている涙を排出する管、鼻涙管が開口しています。

副鼻腔への開口部

 嗅覚器としては、鼻腔上部の粘膜(嗅粘膜)にある嗅細胞が受容器で、ここから嗅神経によって脳の嗅覚中枢に伝えられます。においはいくつかの基本臭に分けられ、エーテル臭、樟脳臭、ジャコウ臭、花臭、ハッカ臭、刺激臭、腐敗臭の7臭を原臭としています。嗅覚は順応が速く、同一のにおいはすぐに感じなくなります。

皮膚のつくりとはたらき

 体の全面をおおっているのが皮膚で、毛や爪などの角質、脂腺、汗腺、乳腺などの皮膚腺を含め、それらを総称して外皮といいます。

 皮膚は触覚、温度感覚(温・冷)、痛覚などの受容器があり、身体の保護、体温の調節などのはたらきを持っています。

 皮膚の全表面積は、成人で約1・5~1・8m2あり、損傷面積がその3分の1を超えると、塩分、水分が失われて生命に危険といわれています。

 皮膚は表皮、真皮、皮下組織からなり、全身を包んで外界から身体を保護します。

皮膚の構造

表皮・真皮・毛・爪・皮膚腺

表皮…皮膚の最外層をなし、重層扁平上皮からでき、5層に区別されます。表面第1層は角質層で、手掌や足底ではとくに厚く丈夫です。角質層は、古くなったものはフケやアカとして落ちていき、下から新しい皮膚が出てきます。

真皮…密な線維性結合組織からなり、血管や神経が分布しています。表皮に接するところでは無数の乳頭が突出し、毛細血管や感覚神経終末(触覚、圧覚、痛覚、温覚、冷覚などの皮膚感覚を分担し受け持っている)がみられます。

皮膚の感覚受容器

皮下組織…疎性結合組織からでき、多量の脂肪細胞(皮下脂肪)を有します。皮下組織内を皮静脈、皮神経が走行します。

毛…毛は、皮膚中にある毛根と、皮膚表面に出ている毛幹からなります。毛根は毛包に包まれ、脂腺と立毛筋(交感神経支配)が付着しています。毛根の毛球部にはメラニン色素を作り出す細胞があります。

爪…爪は指の末節にある角質板で、主体を爪体、皮膚内に埋まっている基部を爪根といいます。

皮膚の付属器

皮膚腺…皮膚腺には、脂腺、乳腺、汗腺があります。汗腺は腋窩、乳輪、肛門周囲などの毛根部にあるアポクリン腺と、毛とは無関係に全身皮膚に分布するエクリン腺とがあります。

 エクリン腺は、とくに手掌・足底に、また腋窩・陰嚢・大陰唇や前頭部にも豊富に存在し、体温調節や精神的な緊張、感動によっても発汗がおこります。