LDH(LD)執筆者:昭和大学病院医学部医学教育推進室教授 高木 康/昭和大学横浜市北部病院病院長 田口 進

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LDHは、AST・ALTともに肝機能検査の3本柱です。この3つが高値なら肝臓病が強く疑われます。

LDH(LD)とは

 細胞内で糖がエネルギーに変わるときに働く酵素のひとつ(乳酸脱水素酵素)。全身のあらゆる細胞に存在している。

医師が使う呼び方:「エルディーエッチ」=lactate dehydrogenase(乳酸脱水素酵素)の略 LDHから。または「にゅうさんだっすいそこうそ」

LDH(LD)の基準値

120~220U/l(JSCC勧告法)

肝臓が障害を受けると高値に

 LDHも、AST、ALTと同様に、肝機能を調べる検査のひとつです。

 LDHも、肝細胞の中に含まれているため、肝細胞が障害(破壊)を受けると細胞の外に出てきて、血液中のLDHの値が上昇します。

 肝障害でLDHが最も高値になるのは、ウイルスが原因でおこる急性肝炎で、急性期には基準値の4~5倍に上昇します。アルコール性肝炎、脂肪肝、慢性肝炎、肝硬変では、2倍以内の上昇が一般的です。

 また、肝臓がんでも上昇しますが、とくに転移性肝臓がんでは、AST、ALTの上昇に比べ、LDHがより上昇するのが特徴です。

急性心筋梗塞でも上昇

 LDHは、肝細胞のほか心筋(心臓の筋肉)、骨格筋、血球など全身のあらゆる細胞に含まれており、それぞれの細胞の障害(破壊)で値が上昇します。

 急性心筋梗塞(こうそく)では、LDHは発症6~10時間で上昇し始め、24~60時間で極値、正常の4~5倍の値になります。この病気は、発症1週間が重要な時期のため、症状が安定するまでLDHをはじめとする血液検査を繰り返し行います。

 また、LDHだけが異常に高値の場合には、悪性腫瘍の存在が疑われます。がん細胞は多くのエネルギーを必要としますので、LDHが多量に出てくるためです。

検査前日・当日の激しい運動は控える

 血清を用いて、自動分析器で測定します。AST、ALTと同様にLDHは赤血球の中にも含まれているために、採血、分離するとき赤血球が壊れる(溶血)と、LDHは外に出て軽度上昇します。

 LDHは、骨格筋細胞にも含まれているため、激しい運動後では翌日くらいまでは軽度上昇することがあるので、検査前日・当日の運動は控えます。

 検査当日の飲食は普通にとってかまいません。

高値のときはアイソザイムを測定

 肝臓の病気では、LDHに加えてAST、ALTも上昇しますが、心臓や筋肉の病気では、LDHとASTが上昇し、ALTはごく軽度の上昇のみです。

 LDHは、急性肝炎や急性心筋梗塞では一時的な数倍の上昇であり、筋肉や血液の病気では2~3倍の持続した上昇を示します。

 LDHが高値のときは、くわえてLDHのアイソザイムを測定し、原因となる病気の診断に役立てます。

 アイソザイムとは、同じ働きをするが分子構造が異なる酵素群のことで、LDHの場合は、さらに分析するとLDH1~LDH5の5つに分けられます。1は心筋や腎臓、赤血球に、2は心筋や肺、3は肺、4と5は肝臓に多く含まれているため、どのアイソザイムが多いかで、異常のある臓器などを探す手がかりになります。

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疑われるおもな病気などは

  • 高値

    肝疾患:急性肝炎、肝臓がん、転移性肝臓がん、肝硬変、慢性肝炎など
  • 心疾患:急性心筋梗塞、心不全など

  • 筋疾患:多発性筋炎(皮膚筋炎)、筋ジストロフィー症など

  • その他:肺梗塞、白血病、悪性貧血、溶血、悪性腫瘍など

出典:四訂版 病院で受ける検査がわかる本 2014年7月更新版