出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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変形性膝関節症
へんけいせいひざかんせつしょう

変形性膝関節症とは?

 変形性膝関節症は、変形性関節症のなかで最も多く、「年をとって膝が痛い」という場合のほとんどがこの病気です。女性に起こることが多く、ほとんどが内反型、すなわちO脚状の変形を伴い、病気が進むにつれて内側の関節面の軟骨がすり減っていきます。

症状の現れ方

 典型的な症状は、長距離歩行時の痛みから始まり、正座ができなくなり、立ち上がりやしゃがみ込み、階段昇降がつらくなり、次いで歩行もしづらくなってくるといったものです。一方で、安静時の痛みは少ないのが普通です。時に水がたまることもありますが、通常何カ月も続きません。進行してくるとO脚状の変形が強くなり、膝は慢性的にはれて大きく見え、曲げ伸ばしの角度が徐々に悪くなってきます。

治療とケアのポイント

 内服薬、外用薬、注射、理学療法、手術などです。

 内服薬は、消炎鎮痛薬が主になります。常用すると胃潰瘍などが心配なので、痛みが強い時だけ、あるいは外出の予定がある時だけ服用するといった服用方法がよいと思います。ただ、安静時も痛い、痛みで眠れないといった場合は、1日2~3回、時間どおりに服用する場合もあります。

 外用薬は、皮膚からの吸収がよい消炎鎮痛薬の入った湿布、塗り薬を使います。冷湿布と温湿布のどちらがよいかよく聞かれますが、今の外用薬は消炎鎮痛成分の効果を期待しているので、冷たいか温かいかで大きな差はありません。両方使ってみて自分に合うほうを決めるのもひとつの方法です。ただ、温湿布は皮膚への刺激が強いので、かぶれが多い傾向にあります。

 注射は、主にヒアルロン酸という、関節液や軟骨の成分を含んだ注射剤をよく使います。潤滑剤としてのはたらきや炎症を抑える効果があります。また、ステロイド薬を使うこともあります。炎症や痛みを抑えるのに高い効果がありますが、使いすぎると逆に軟骨や靭帯を弱くする心配があります。

 理学療法では、温熱療法がよく行われます。いわゆる"デンキをかける"という治療もこれにあたります。効果は一時的な場合から、すっかりよくなる場合まで、膝の状態によってさまざまです。1~2カ月続けてみて、効果があるようなら続けます。太ももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることも重要です。大腿四頭筋を鍛えるには、あお向けに寝た状態で、片脚を伸ばしたままで挙上します。かかとが床から10cm程度離れたところで止めて、5~10秒間。これを10~20回行います。この運動を3カ月続けると、膝の痛みが明らかに改善すると報告されています。

 変形性膝関節症の手術には、高位脛骨骨切り術、関節鏡手術、人工膝関節全置換術などがあります。病院では、痛みの程度や歩行能力、年齢、X線所見、患者さんの希望などを考慮して手術の適否を決定し、手術法を選択します。人工関節置換術は、長期成績も良好で手術後のリハビリテーションも早く進むので、年々手術件数が増えています。ただし、手術した関節への細菌感染、静脈血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)などの合併症も起こりえるので、担当の医師とよく相談して決めましょう。

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(執筆者:医療法人一心会伊奈病院整形外科部長 石橋 英明)

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