出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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急性化膿性乳腺炎
きゅうせいかのうせいにゅうせんえん

  • 外科
  • 診療に適した科

もしかして... 乳がん  ケロイド

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急性化膿性乳腺炎とは?

どんな病気か

 乳腺が細菌感染して、激しい炎症を起こしたものをいいます。

原因は何か

 ほとんどが、生後1カ月以降の乳児に授乳中の母親に発症します。この時期、乳児には乳歯が生え始めます。乳歯により母親の乳首に細かな傷が生じ、そこから乳児の口腔内の細菌が感染するのです。細菌は乳管、あるいは授乳期で浮腫状になった乳腺組織を通じて広がり、難治性の炎症を起こします。起因菌は多くの場合、黄色ブドウ球菌です。

症状の現れ方

 急性化膿性乳腺炎は、外科的感染症のなかでも最も症状の激しい病気です。患側の乳腺は発赤、腫脹、激しい疼痛と局所の熱感を訴えます。明らかな腫瘤を形成することはありません。感染が進行すると乳腺内に膿瘍を形成し、38℃以上の高熱を発します。腋窩リンパ節が痛みを伴って腫大することがあります。

検査と診断

 臨床症状、血液検査(白血球数の増加、CRP値の上昇)、超音波検査等で診断は可能です。膿瘍を形成していることが確認できれば膿汁を穿刺吸引して培養により起因菌を特定し、抗生剤の感受性検査を行います。念のため穿刺物を細胞診断して、乳腺炎とまぎらわしい炎症性乳がんではないことを確認しておきます。

治療の方法

 急性化膿性乳腺炎であると診断されたら、ただちに有効な抗生剤を投与します。授乳は中止し、乳房に冷罨法(冷やす)などを施すことにより疼痛などの症状を軽くしますが、本症の治療は授乳期という特殊な環境では困難であることが多いです。治療しているにもかかわらず膿瘍を形成した場合には、切開して排膿を行います。

 歴史的にペニシリン耐性ブドウ球菌が最初に認識されたのは乳腺炎の治療過程であるといわれていることからも、漫然と抗生剤による治療を続けることには問題があります。的確な切開、排膿は非常に効果的です。切開法には乳輪切開や輪状切開法などがありますが、炎症の激しい時点での切開は、のちにケロイドが残ります(図2図2 急性化膿性乳腺炎の切開法)。

図2 急性化膿性乳腺炎の切開法

病気に気づいたらどうする

 急性化膿性乳腺炎は重い感染症であるという認識をもって外科を受診し、適切な診断、治療を受けます。

急性化膿性乳腺炎と関連する症状・病気

(執筆者:国家公務員共済組合東京共済病院乳腺外科部長 馬場 紀行)

乳腺炎に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、乳腺炎に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

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