出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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身体活動・運動
しんたいかつどう・うんどう

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身体活動・運動とは?

 ここでは厚生労働省作成の「健康づくりのための運動指針2006」に基づいて解説します。

 体を動かす動作には、身体活動、運動、生活活動に分類できます。

①身体活動

 安静にしている状態より多くのエネルギーを消費するすべての動きのことをいいます。

②運動

 身体活動のうち、体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施するものをいいます。

③生活活動

 身体活動のうち、運動以外のものをいい、職業活動上のものも含みます。

身体活動の強さと量

 身体活動の強さの単位は「メッツ」といいます。これは、安静時の何倍に相当するかを表す単位で、座って安静にしている状態が1メッツ、普通歩行が3メッツに相当します。

 身体活動の量の単位を「エクササイズ」といいます。 身体活動の強度(メッツ)に身体活動の実施時間(時)をかけたものです(図13図13 1エクササイズに相当する活発な身体活動)。

図13 1エクササイズに相当する活発な身体活動

(例) 6メッツの身体活動を30分行った場合 :6メッツ×1/2時間=3エクササイズ

エクササイズと消費エネルギー

 1エクササイズの身体活動量に相当するエネルギー消費量は、個人の体重によって異なります。具体的には、表12表12 1エクササイズの身体活動量に相当する体重別エネルギー消費量の簡易換算式から算出することができます。この式から算出した体重別のエネルギー消費量を表12表12 1エクササイズの身体活動量に相当する体重別エネルギー消費量にまとめていますので、自分の身体活動量の目標に対応したエネルギー消費量を確認できます。

表12 1エクササイズの身体活動量に相当する体重別エネルギー消費量

健康づくりのための身体活動量

 活発な身体活動を行うと、消費エネルギーが増えて身体機能が活性化することにより、糖や脂質の代謝が活発となり、内臓脂肪が減少します。その結果、血糖値や脂質異常、血圧が改善し、生活習慣病の予防につながります。

 また、運動による消費エネルギーの増加や体力の向上も生活習慣病の予防に効果があるとされています。

 生活習慣病の発症を軽減するには、1週間に23エクササイズの活発な身体活動(運動・生活活動)をとり入れ、そのうち4エクササイズは活発な運動をすることが科学的に証明されています。なお、活発な身体活動とは、3メッツ以上の身体活動です(表13-1表13-1 「3メッツ」以上の運動(身体活動量の目標の計算に含むもの)表13-2表13-2 「3メッツ」以上の生活活動(身体活動量の目標の計算に含むもの))。したがって、座って安静にしている状態は1メッツですが、このような3メッツ未満の弱い身体活動は目標に含みません(図14図14 身体活動・運動・生活活動)。

表13-1 「3メッツ」以上の運動(身体活動量の目標の計算に含むもの)

表13-2 「3メッツ」以上の生活活動(身体活動量の目標の計算に含むもの)

図14 身体活動・運動・生活活動

運動量は

●ステップ1 身体活動量チェック

 「身体活動量評価のためのチェックシート」(表13表13 身体活動量評価のためのチェックシート)を使って、身体活動量の目標(23エクササイズ)、運動量の目標(4エクササイズ)と比べて現在の身体活動量がどうなっているか、チェックしてみましょう。

表13 身体活動量評価のためのチェックシート

 あなたの結果は1週当たり23エクササイズの活発な身体活動を、そのうち4エクササイズは活発な運動をしていたでしょうか。

 現在の身体活動量が目標に達していない人は、まず日常生活のなかでの歩行や自転車などの生活活動を増やし、身体活動量の目標を達成することを目指しましょう。歩数計を用いて歩数を計ることは、体重を測るのと同様に、手軽にできますので、ぜひ始めてみましょう。

 目標を達成されている方は、現在の身体活動量を維持するとともに、体力の評価結果に応じた運動を行って体力の向上を目指しましょう。

 健康づくりのための身体活動量の目標である週23エクササイズの身体活動を歩数に換算すると、1日当たりおよそ8000~1万歩くらい(1週間で5万6000~7万歩くらい)となります。

 運動量の目標を設定し、運動を実施するにあたっては、現在の運動習慣と体力に応じた目標を設定することが重要です。運動習慣のない方は、週に2エクササイズから始め、慣れてきたら4エクササイズを目標に少しずつ運動量を増加させましょう。すでに運動を週に4エクササイズ以上実施している方は、10エクササイズを目標に運動量を増やすようにしましょう。

 また、運動を行うにあたっては、ステップ2の体力の評価結果より得られた体力の状況に応じて、自分の目的とする体力を安全かつ効果的に向上させるための運動を行うことが有効です。

 健康づくりに有用な、1週当たり4エクササイズの運動、これは速歩なら約60分、テニスなら約35分に相当します。

●ステップ2 体力チェック

 体力(持久力と筋力)が自分の性・年代に対応する目標に達しているかチェックしてみましょう。

(1)持久力の評価

持久力についてはその代表的な項目である全身持久力の評価方法について取り上げます。

① 3分間「ややきつい」と自分の感じる速さで歩き、その距離を測定します。

② 測定した距離(m)から、表14表14 性・年代別の歩行距離であなたの持久力について評価してみましょう。

表14 性・年代別の歩行距離

③ 測定した距離(m)が、あなたの性・年代に対応する距離以上の場合は、あなたの現在の持久力は、生活習慣病予防のために目標となる持久力にほぼ達しています。

④ 一方、測定した距離(m)があなたの性・年代に対応する距離未満の場合は、目標となる持久力に達していません。

(2)筋力の評価

 筋力については、とくに下肢の筋力が加齢による影響を受けることから、ここでは下肢の筋力を調べます。

図15図15 筋力評価の方法に示す椅子の座り立ちを10回行い、ストップウォッチで時間を測定します。

図15 筋力評価の方法

② 測定した時間(秒)から、表15表15 性・年代別の時間(秒)で自分の筋力を評価しましょう。座る姿勢にもどした時にお尻が椅子につかない場合や、膝が完全に伸びていない場合は回数に数えません。

表15 性・年代別の時間(秒)

③ 測定した時間(秒)の結果が、表15表15 性・年代別の時間(秒)のあなたの性・年代に対応する「普通」または「速い」に該当する場合は、あなたの現在の筋力は、生活習慣病予防のために目標となる筋力にほぼ達しています。

④ 一方、「遅い」に該当する場合は目標となる筋力に達していません。

 持久力を向上させるためには、速歩、ジョギング、自転車、エアロビクス、水中運動、水泳、球技、ダンスなどが、持久力を高めるために適した運動です。これから運動を始める方には、手軽な速歩がおすすめです。

 持久力を向上させるためには、「きつい」と感じるような強い運動を無理にする必要はありません。自分が「ややきつい」と感じる強さで運動することで、安全に持久力を向上させることができます。「速歩」を例に「ややきつい」という運動の強さを説明すると、次のようになります。

・いつも歩いているより速い

・ちょっと息が弾むが、笑顔が保てる

・長時間運動が続けられるか少し不安に感じる

・5分程度で汗ばんでくる

・10分程度運動すると、すねに軽い筋肉痛を感じる

 これから運動を始める方は、「かなり楽である」と感じる強さから始め、少しずつ強さを増して、「ややきつい」強さでの運動を目指しましょう。

 運動量は、週4エクササイズを目指しましょう。

 自宅でできる筋力を向上させる筋力トレーニングとしては、図16図16 自宅でできる筋力トレーニングの例のような方法があります。それぞれの動作を、正しい姿勢で、反動をつけずにゆっくりと、呼吸を止めずに、鍛えている筋肉を意識しながら行いましょう。

図16 自宅でできる筋力トレーニングの例

 筋力の評価の結果に応じた量のトレーニングを目指しましょう。

・「遅い」→①~③の各種目10回×1セットを週5~7回

・「普通」→①~③の各種目10回×2セットを週5~7回

・「速い」→①~③の各種目10回×3セットを週5~7回

*筋力に自信のない方は、最大2セットとしましょう。

(執筆者:東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター教授 和田 高士)

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