出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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VDT障害
ぶいでぃーてぃーしょうがい

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VDT障害とは?

どんな病気か

 VDT障害は、ワードプロセッサー、コンピュータなどの画面、すなわちビジュアル・ディスプレイ・ターミナル(VDT)を、長時間使うことによって引き起こされる眼・体や心に影響の出る病気で、主に職業性疾患として問題になっています。

 近年、機械の制御から事務処理に至るまで情報処理のほとんどがコンピュータを介して行われるようになり、VDT作業が著しく増え、それに伴う障害の発生が問題になってきました。

 VDT作業は「CRTディスプレイ、キーボード等により構成される機器(VDT機器)を使用して、データの入力・検索・照合等、文書の作成・編集・修正、プログラミング等を行う作業」と定義されています。

原因は何か

 VDT作業は、椅子に腰掛けた姿勢でVDT装置を注視しつつデータなどをキーボードで入・出力する作業で、従来のデスクワークと異なり視機能への負担が大きいこと、拘束姿勢を強いられることや、処理の高速化が容易なため負荷が過重になりやすいことがあります。

 このような過重な負担によって次のような筋骨格系・視覚系・精神神経系の疲労症候が起こります。

①特殊な輝度、色彩、コントラストの表示装置を注視することによって生じる眼精疲労

②作業姿勢を維持するために使う特定の筋肉の疲労、しこり、痛みなどの頸肩腕障害

③打鍵(キーを打つ)作業による手指伸筋部の腱鞘炎

④書痙(書字けいれん)様症状、書字または打鍵に際してのみ、手が硬直して、動作ができなくなる状態

⑤単調な作業の連続による精神衛生上の問題

症状の現れ方

 眼の症状には眼の疲れ(眼精疲労)、視力の低下、眼のかすみ、眼痛などが含まれ、これらの症状は1日の作業時間が長くなるほど多くなります。これらの訴えは、ドライアイ、額の圧迫感やめまい、吐き気などに進むこともあります。

 体の症状としての肩こり、首から肩、腕の痛み、体のだるさなどの症状を訴えることもあり、慢性的になると背中の痛み、手指のしびれなども加わります。精神の症状としてイライラ感、不安感、抑うつ状態、頭痛なども示します。

治療の方法

 作業管理・作業環境管理の徹底が最も重要で、基本的には視距離・姿勢の拘束性を排除します。眼精疲労に対する屈折異常の矯正も重要です。連続作業時間も長くなりすぎないように注意します。

 精神神経系症状が軽度の場合、適切な休息程度で軽快することが多いのですが、中等度以上では薬物療法や作業軽減・休業が必要になることもあります。

予防対策はどうするか

 適度な休憩をVDT作業の間に挟むことが必要です。その時間は1時間につき10~15分程度で、その際には近くを見る作業で眼の調節に負荷がかかっていた状態から、遠方の景色を見るような緊張を解いた状態にすることがすすめられます。体の筋の緊張を解く体操もよいことです。乱視遠視ないし近視など、本人の屈折に合った眼鏡やコンタクトレンズの装用も必要です。

 作業環境としては、適切な照明がVDT画面、原稿、およびキーボードに与えられることが必要です。また、書類と眼の距離も画面からの距離とあまり差がないようにします。画面と眼の距離は40~70cm程度、視線がやや下向きになる角度、画面の反射をさえぎるフィルターの利用などが必要です。

 作業時に適切な姿勢が保てるように、机に合った椅子の形と高さも必要です。厚生労働省からは障害予防の指針が示されています。

(執筆者:前栃木産業保健推進センター所長 松井 寿夫)

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処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

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コラムウォークマン難聴

前栃木産業保健推進センター所長 松井寿夫

 携帯用音楽再生機(テープ、CD、MDなどを再生するもの)の出す大きな音に長期間さらされることによって起こる慢性騒音性難聴のひとつです。

 この難聴は内耳性難聴で、長い期間大音量にさらされることによって内耳の感覚細胞である有毛細胞が破壊されて起こります。したがって1日の平均使用時間と音の大きさ(音量レベル)が発症に関係します。いったん有毛細胞が壊れると元にもどることはなく、難聴は回復することはありません。この騒音性難聴の初期には4000Hz(ヘルツ)付近の音が聞こえにくくなります。会話領域の音は500~2000Hzなので内耳の障害が起こっていても日常生活に聴力の支障はなく、初期には気がつきません。

 その後も騒音にさらされ続けると会話領域の難聴に進みます。ヘッドホンの音は100dB(デシベル)を超えることが少なくなく、このレベルの音を長時間聞き続けるのは耳によくありません。

予防対策はどうするか

 携帯用音楽再生機を使用する場合は、密閉型ヘッドホンの使用をなるべく避ける、音量を上げすぎない、周囲が騒がしいところでの使用は避けるなどを心がける必要があります。聴力検査により、会話領域の障害に進む前に見つけることが大切です。

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