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胆のうポリープの治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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胆のうポリープとは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 胆のう内の粘膜にできた肉眼でわかるほどの大きさの小隆起を胆のうポリープといいます。ほとんどがコレステロールポリープと呼ばれる良性のもので、症状はとくにありませんが、腹痛や不快感を覚えることもあります。人間ドックなどの超音波検査で発見されることが多いようです。胆のうがんを疑われ、判別が必要になった場合にはさらに詳しい検査としてCT、MRI、超音波内視鏡が行われます。

 ポリープの大きさによっても、がんである確率が変わってきます。

 直径が10ミリメートル以下のものでは、がんは6パーセント程度にすぎません。直径11~15ミリメートルでは25パーセントががんで、直径16ミリメートル以上になると、60パーセントを超える確率でがんと診断されます。

 直径10ミリメートルを超えるものや、検査のたびごとに大きくなっているものはとくに注意が必要で、がんの疑いが否定できない場合は、腹腔鏡下胆のう摘出術などの外科治療を行うのが一般的です。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 胆汁に含まれるコレステロールが粘膜に付着して結晶化し、細い茎状になったものがコレステロールポリープです。粘膜を構成する腺細胞の一部が増殖してできるポリープもあります。増殖が正常な腺細胞だけなら良性のものですが、一部ががん化することもあります。

 良性のものなら、症状はあっても腹部の不快感程度ですが、がんの場合は進行するにつれて黄疸、発熱、下痢、食欲不振、体重減少などがみられます。

病気の特徴

 胆のうポリープは、人間ドックの検査によって、5~10パーセントの人に見つかるとされています。

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
腹腔鏡下胆のう摘出術を行う ★3 腹腔鏡下胆のう摘出術の効果は、臨床研究によって確認されています。おなかに小さな穴を数カ所あけ、そこから内部を映し出す腹腔鏡や手術器具を挿入して、胆のうを摘出する手術です。開腹手術に比べ、患者さんの負担が少なくてすみます。胆のうポリープの大きさが5~10ミリメートルで増大傾向が認められる場合や、大きさが10~20ミリメートルあって、がんの疑いが否定できない場合に、この手術が行われます。 根拠(1)(2)
開腹手術を行う ★3 開腹手術の効果は臨床研究によって確認されています。胆のうポリープの大きさが18~20ミリメートル以上の患者さんでは、CTや超音波内視鏡などでポリープの進展度を確認したうえで、開腹手術を行います。 根拠(1)

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

5ミリメートル以下なら、定期検査で経過を見守る

 一般に、大きさが5ミリメートル以下のポリープは、良性と考えられています。

 痛みなどの症状がなければ治療は不要ですが、年に1~2回は定期的に超音波検査で経過観察することを勧めます。

 ただし、サイズは小さくてもがんの疑いが否定できない場合は、腹腔鏡下胆のう摘出術で胆のうそのものを取り除くことが、基本方針になっています。

5ミリメートルより大きく増大傾向があれば、手術を

 胆のうポリープの大きさが5~10ミリメートルの場合は、コレステロールポリープ、腺腫、あるいは胆のうがんの可能性があります。

 いまのところ、検査についての基準は明確でないようですが、年に1~4回の超音波検査を勧めています。ポリープの増大傾向があれば、外科的治療が必要になります。

10ミリメートル以上の場合は、悪性の可能性が高い

 胆のうポリープの大きさが10~20ミリメートルの場合は、まず悪性と考えて対応したほうが安全です。通常、このサイズでは、胆のう周囲の臓器や所属リンパ節への転移がない早期がんと考えられ、腹腔鏡下胆のう摘出術が行われます。ポリープの大きさが20ミリメートル以上の場合は、周囲に転移している進行がんの可能性が高いため、開腹手術を行うのが一般的です。

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根拠(参考文献)

  • (1) Kubota K, Bandai Y, Noie T, et al. How should polypoid lesions of the gallbladder be treated in the era of laparoscopic cholecystectomy? Surgery. 1995;117:481-487.
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)