喀痰検査(喀痰細胞診)執筆者:昭和大学病院医学部医学教育推進室教授 高木 康/昭和大学横浜市北部病院病院長 田口 進
痰の中に細菌やがん細胞が含まれているかどうかを調べる検査です。喀痰細胞診で陽性の場合は、がん細胞が見つかったことを意味します。
クラス | 評価 |
---|---|
I | 陰性 |
II | 陰性 |
III | 偽陽性 |
IV | 陽性 |
V | 陽性 |
呼吸器疾患の診断に不可欠な検査
喀痰(かくたん)とは、「痰を吐くこと」、あるいは単に「痰」を指す言葉です。主成分は、気管や気管支粘膜からの分泌物で、その中に剥離(はくり)した細胞や吸引した異物、細菌やウイルスなどが混じっています。
喀痰検査は、痰の中にどのような病的な成分が含まれているかを調べるもので、呼吸器の病気を調べるために不可欠の検査になっています。喀痰検査には、喀痰細胞診と喀痰細菌検査があります。
喀痰細菌検査は、痰の中に細菌が含まれているかどうかを調べる検査です。肺炎の原因菌の確定や結核の証明など、呼吸器感染症の診断のために痰をとり、培養して検査を行います(喀痰培養)。以下、喀痰細胞診についてみていきます。
肺がんの診断に重要な喀痰細胞診
近年、喫煙や社会環境などの変化で、肺がんの患者さんが増加しています。がんの確定診断は、がん細胞を証明することが必要です。肺がんは、痰の中にがん細胞が排出されることも多く、そのため肺がんの診断のひとつとして喀痰細胞診が行われています。
3日分の痰をためて調べる喀痰細胞診
喀痰検査は自己採取のため、不良検体となることがあるので、採痰のしかたについてきちんと指導を受けることが大切です。
喀痰細胞診には、3日間の痰をためて検査する方法(蓄痰法)と、1日ごとに痰をとって3日連続して検査する方法(連続法)とがあります。3日分の痰を採取するのは、1日だけの場合だとがん細胞の検出率が低いためで、最低でも3日分の採痰が望ましいからです。ここでは、蓄痰法について述べます。
痰は多めのほうがいいので、いつでもとれるときにとってください。最もよいのは起床直後の痰で陽性率が高いため、できるだけ朝おきたら採痰するようにします。
採痰するときは、必ずうがいをして口の中をきれいにします。これは食物の残りかすなどが痰の中に混ざり、がん細胞との鑑別が難しくなることがあるからです。
痰を出すときは、強い咳(せき)をしながら深部のほうから、固定液の入った採痰専用の容器の中に直接、出すようにします。
とれた痰は、ふたをして固定液と混じるように、強く振ってよく撹拌(かくはん)します。これは、固定液には細胞をバラバラにする働きがあり、撹拌しないと喀痰は塊の状態で変性し、正確な検査ができないためです。
採痰後は、冷蔵しないでください。翌日も同じ容器に痰を出し、よく撹拌して保存し、これを3日間繰り返します。
細胞はクラス分類して評価
提出した痰は染色され、病理の専門医により診断されます。喀痰細胞診では、正常細胞からがん細胞まで、細胞の型や染色程度で5段階に分類されます。
クラスIとIIは陰性で、がん細胞はありません。クラスIはまったくの正常細胞で、クラスIIは炎症をおこしている細胞ですが、がんではありません。
クラスIIIは偽陽性で、再検査をします。IVとVは陽性で、がん細胞が認められたことであり、さらに腫瘍マーカーや胸部CTなどを行って、くわしい検査を行います。
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疑われるおもな病気の追加検査は
肺がん
腫瘍マーカー(シフラ、SCCなど)、胸部CT、PET-CT、気管支内視鏡など
肺炎
胸部単純X線撮影、胸部CTなど
肺結核
胸部単純X線撮影、胸部CTなど
- 出典:四訂版 病院で受ける検査がわかる本 2014年7月更新版