アミラーゼ執筆者:昭和大学病院医学部医学教育推進室教授 高木 康/昭和大学横浜市北部病院病院長 田口 進

つぶやく いいね! はてなブックマーク

とくに膵臓の異常を調べるための検査です。アルコールの飲み過ぎや脂肪のとりすぎなどで、膵細胞が破壊されると血液中に増加します。

アミラーゼとは

 膵臓から十二指腸に分泌され、栄養素のひとつである澱粉(でんぷん)(糖質)を分解する消化酵素。

医師が使う呼び方:「アミラーゼ」

アミラーゼの基準値

40~130U/l

(JSCC勧告法)

膵炎で高値に

 アミラーゼは、おもに膵(すい)臓の細胞に存在し、膵細胞が破壊されると血液中に出てくる(逸脱)ため、これが高値を示していれば、膵臓の障害が疑われます。

 急性膵炎は激しい腹痛を伴い、血液中のアミラーゼをはじめとする膵酵素が基準値の10数倍の高値になります。

 アルコールが原因の60~80%を占める慢性膵炎では、持続した腹痛(軽度の鈍痛)と、アミラーゼが2~3倍の高値になります。

 膵臓がんでは、2~3倍の軽度の上昇が一般的ですが、がんに急性膵炎を合併すると、10数倍の高値になります。

 アミラーゼは、血液中から尿中へ排泄されるため、血液中と同時に尿中アミラーゼを測定することも重要で、上昇の程度は血液中アミラーゼに比例し、急性膵炎では10数倍に、慢性膵炎や膵臓がんでは数倍になります。

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)でも上昇

 アミラーゼは、唾液腺にも多く含まれているため、唾液腺の病気の疑いがあるときも調べます。

 このアミラーゼ(S型)は、膵臓のアミラーゼ(P型)とは区別できます。ウイルスが耳下腺に感染して発症するおたふくかぜは、耳下腺のはれと痛みに加えてアミラーゼ(S型)が2~3倍の高値になります。

重症急性膵炎では2~3週間、繰り返し測定

 血清を用いて、自動分析器で測定します。測定法により基準値が異なります。検査当日の飲食は普通にとってかまいません。

 急性膵炎では、発病1~2日でアミラーゼの値が最高になり(10数倍の値)、その後、急激に低下して約1週間でほぼ基準値に戻ります。激しい腹痛があるので判別することができますが、ほかの血液中膵酵素の判定や腹部超音波、腹部CTで確定診断します。

 重症急性膵炎や膵嚢(のう)胞を合併しているときは改善が遅れるため、2~3週間は繰り返し測定して、改善の確認が重要です。

 持続する軽度の高値のときは、慢性膵炎や膵臓がんなどを考え、上記の検査のほかに逆行性膵胆管造影、MR(MRCP)、腫瘍マーカー、PET-CTの検査が行われます。

おすすめの記事

疑われるおもな病気などは

  • 高値

    膵疾患:急性膵炎、慢性膵炎、膵臓がん、膵嚢胞など
  • その他:流行性耳下腺炎、イレウス(腸閉塞)、卵巣腫瘍、肝炎、腎不全など

  • 低値

    慢性膵炎(膵機能荒廃期)など
出典:四訂版 病院で受ける検査がわかる本 2014年7月更新版