その他の自己抗体執筆者:昭和大学病院医学部医学教育推進室教授 高木 康/昭和大学横浜市北部病院病院長 田口 進

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医師が使う呼び方: 抗DNA抗体=「コウディーエヌエー」、 抗U1-RNA抗体=「コウユーワンアールエヌエー」、 抗Sm抗体=「コウエスエム」、 抗Scl-70抗体=「コウエスシーエル」、 抗SS-A抗体=「コウエスエスエー」、 抗SS-B抗体=「コウエスエスビー」、 抗ミトコンドリア抗体=「コウミトコンドリア」、 抗平滑筋抗体=「コウヘイカツキン」、 抗内因子抗体=「コウナイインシ」、 抗胃壁細胞抗体=「コウイヘキサイボウ」

その他の自己抗体の基準値

陰性(-)

自己抗体と自己免疫疾患

 私たちの細胞核の成分は、核酸(DNA=デオキシリボ核酸、RNA=リボ核酸)と核蛋白とに分類されます。これらを攻撃する自己抗体が、各種の膠原病(こうげんびょう)や自己免疫疾患で検出されます。

抗DNA抗体

 抗DNA抗体は、抗核抗体の代表で、DNAを攻撃する自己抗体です。検査では、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖DNA(ssDNA)が測定されています。

 抗DNA抗体は、膠原病のひとつ、全身性エリテマトーデス(SLE)で高率に検出されます。しかし、その他の膠原病では陽性率は20~30%以下で、抗体価も低いのが普通です。抗dsDNA抗体の陽性率は、表のようになります。

抗U1-RNP抗体

 U1-RNPはRNAと蛋白の複合体で、抗U1-RNP抗体は、核蛋白の中の70kD蛋白、A蛋白、C蛋白を攻撃する自己抗体です。

 抗U1-RNP抗体は、混合性結合組織病(MCTD)では100%が陽性となるほか、全身性エリテマトーデスでは20~40%、全身性強皮症では5~30%が陽性になります。

抗Sm抗体

 抗Sm抗体は、蛋白の中のB蛋白とD蛋白を攻撃する自己抗体です。

 全身性エリテマトーデスでは20~30%に検出されますが、特異度は95%と高率です。

抗Scl-70抗体

 抗Scl-70抗体は、DNAトポイソメラーゼIという酵素を攻撃する抗体で、DNAの二重ラセン構造のねじれをゆがめます。全身性強皮症での検出率が高く、肺線維症、心疾患や悪性腫瘍の合併率が高いとされています。

抗SS-A抗体、抗SS-B抗体

 抗SS-A抗体、抗SS-B抗体は、核蛋白の中の52kD蛋白と60kD蛋白を攻撃する自己抗体です。

 SSとはシェーグレン症候群のことで、この病気で高率に検出されますが、全身性エリテマトーデスやその他の膠原病でも陽性になります。

抗ミトコンドリア抗体

 ミトコンドリアは細胞核の外に存在し、細胞のエネルギー源となる物質(ATP=アデノシン三リン酸)をつくる器官で、これを攻撃する自己抗体が抗ミトコンドリア抗体です。

 抗ミトコンドリア抗体は、肝疾患に関連して検出されます。原発性胆汁性肝硬変で80~90%に検出され、自己免疫疾患でも40~50%に認められます。原発性胆汁性肝硬変は中年女性に好発し、健康診断ではALPだけが上昇していることで発見されることがよくあります。

抗平滑筋抗体

 抗平滑筋抗体は 平滑筋という筋肉細胞を攻撃する自己抗体です。自己免疫性肝炎で60~90%、慢性活動性肝炎で15~70%が検出されます。

抗内因子抗体、抗胃壁細胞抗体

 経口摂取されたビタミンB12は胃底部、胃体部に存在する胃壁細胞が胃液中に分泌する内因子と結合して回腸から吸収されます。この内因子、胃壁細胞に対する自己抗体が抗内因子抗体、抗胃壁細胞抗体であり、悪性貧血や萎縮性胃炎などで検出されます。

■おもな膠原病とおもな自己抗体の陽性頻度(%)
抗dsDNA抗U1-RNA抗Sm抗Scl-70抗SS-A
全身性エリテマトーデス70~10020~4020~30<540~60
混合性結合組織病<5100<5<5-
全身性強皮症20~305~30<520~3010~30
多発性筋炎・皮膚筋炎5~105~10<5<510~20
関節リウマチ<510<5<520~30
シェーグレン症候群20~30-<5550~70

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出典:四訂版 病院で受ける検査がわかる本 2014年7月更新版