膵臓がん執筆者:昭和大学病院医学部医学教育推進室教授 高木 康/昭和大学横浜市北部病院病院長 田口 進

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 膵(すい)臓がんは、発生数および死亡数とも増加傾向にあります。発生数の増加は、画像診断の進歩によって発見される確率が上がってきているという側面も示しています。以前から、発見・治療ともに難しいがんの代表といわれてきましたが、早期発見できたものについては長期生存できる症例も増えてきています。

おもな症状

 無症状のことも少なくありませんが、おもな初発症状としては、腹部や腰背部の疼痛(とうつう)、食欲不振、体重減少、黄疸などです。これらは他の消化器疾患の一般的症状と同じであるため、鑑別を難しくしています。

手順

①血液検査(膵臓由来の酵素)/腫瘍マーカー

②腹部超音波

③CT/MR(MRCP)/PET-CT

④逆行性膵(胆)管造影

⑤腹部血管造影

 検査項目はおもなものを示してあります。また手順は、症状やがんの状態などによっては順序がかわることがあります。

診断は難しいが、多くの検査法を組み合わせて工夫

 スクリーニング(ふるい分け)の検査として、まず血液検査で膵臓由来の酵素(アミラーゼやリパーゼなど)をチェックします。ただし、病態によっては高値を示さないこともあります。

 腫瘍マーカーも各種あって、CEAやCA19-9などを組み合わせることで診断率は向上しています。早期がんでは陽性率は低いのですが、進行がんではCA19-9が60~80%で陽性になります。

 画像診断としては、まず腹部超音波を行います。膵臓は体の後方にあるため診断は難しいのですが、解析能力が高まったこともあり、膵臓がんの約半数は腹部超音波で発見されています。

 さらに、腹部CTやMR(MRCP)などが試みられます。CTの場合、通常のスライス幅では2㎝以下の病変をみつけることは難しく、胆管や膵管の拡張などの間接的な所見も重要です。そこで、CTの特殊型のヘリカルCTやダイナミックCT、PET-CTなどの最新技術を併用して、発見率を高める工夫がなされてきています。

 MRはがんの有無だけでなく、その進展の具合や質的な診断に有用です。MR検査では、膵管を特別に処理(抽出)するMRCP検査も行われています。

さらに高度な造影検査も

 以上の検査で膵臓がんが疑われたら、逆行性膵(胆)管造影や腹部血管造影が行われます。逆行性膵(胆)管造影は小さながんに対しても、他の検査法より高い所見率を示しています。さらに続けて、病変の一部を採取する生検や膵液細胞診を実施できるので、確定診断に重要です。

 また、血管造影では、血管のさまざまな変化(閉塞、屈曲、不整など)を確認でき、手術適応の判断などに有用です。

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出典:四訂版 病院で受ける検査がわかる本 2014年7月更新版