高齢者の高血圧
こうれいしゃのこうけつあつ
高齢者の高血圧とは?
どんな病気か
60歳代の約60%以上、70歳以上の70%以上が高血圧にかかっていると考えられており、受診率も全疾患を通じて第1位になっています。加齢とともに収縮期血圧(高いほうの血圧)は上昇し、拡張期血圧(低いほうの血圧)はむしろ低下傾向にあります。このため脈圧(高いほうと低いほうの差)のひらきが著しくなります。
高齢者における収縮期血圧の上昇および脈圧のひらきが大きくなることは、心血管病のリスクとして重要です。
高齢者はもともと脳循環、冠動脈循環、腎血流などの主要臓器の血流量は低下し、さらに各臓器の血流自動調節能は障害され、血圧下限値が高血圧側に動いています。そのため、急激に血圧を下げすぎることは、これらの臓器の血流障害をもたらす可能性があるので、とくに脳梗塞や心筋梗塞の既往のある患者さんでは、よりゆっくり血圧を下げる必要があります。
加齢に伴い全身の主要臓器の予備能力は低下しますが、高血圧の治療上とくに重要なのは腎機能の低下です。他の特徴として、
・マンシェット法(腕にカフを巻き、空気を入れて聴診器で血圧を聞く方法)では見かけ上高く評価される可能性があること
・聴診器で血管音が聞きとりにくいことがあること
・血圧が動揺しやすいこと
・起立性低血圧や食後性低血圧例の増加
・血圧日内変動の変化-夜間非降圧型および過度降圧型の増加(無症候性脳梗塞の頻度の上昇)
・早朝の昇圧例の増加
・白衣高血圧(コラム)の増加
があります。
検査と診断
高齢者の高血圧の診断基準も一般成人と同様に140/90mmHgとされています(表7)。しかし、いくつかの臨床研究では160/95mmHg以上で薬物治療が行われており、140/90mmHg以上という値が降圧治療の対象血圧値というわけではありません。
高齢者の高血圧では、動揺性が著しいため、日を変えて繰り返し血圧を測定し、常に高いことを確認する必要があります。起立性低血圧の頻度が増すため、立位血圧(起立後3分以内の血圧)の測定が重要で、治療開始前、治療開始後に必ず行います。
24時間血圧測定(ABPM)が有用ですが、1日に何回か測定する家庭血圧も参考になります。
治療の方法
治療を行う際の基準値の1例を表7に示します。
治療法としては次のとおりです。
①食事療法
高齢者は食塩に感受性が高く、減塩は有効です。また、肥満者では減量も有効です。しかし、あまり減塩を強くすすめると、長年の食習慣から塩味の少ない食事を食べなくなることもあるので注意します。
②運動療法
心拍数110拍/分程度の運動は60歳以上の高齢者にもよい適応ですが、心臓の状態、骨や関節の状態に合わせて行います。
③お酒、たばこ
日本酒で1日2合程度、たばこに関しては基本的には禁煙とします。
④降圧薬療法
ほかに合併症のある場合とない場合で治療法が変わることがあります。
高血圧症に関連する可能性がある薬
医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、高血圧症に関連する可能性がある薬を紹介しています。
処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。
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ドキサゾシン錠0.5mg「NS」 ジェネリック
血圧降下剤
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アラセプリル錠25mg「サワイ」 ジェネリック
血圧降下剤
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バルヒディオ配合錠MD「サワイ」 ジェネリック
血圧降下剤
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バルサルタン錠20mg「杏林」 ジェネリック
血圧降下剤
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アムバロ配合錠「杏林」 ジェネリック
血圧降下剤
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メチルドパ錠(ツルハラ)125
血圧降下剤
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プロプラノロール塩酸塩錠10mg「ツルハラ」 ジェネリック
不整脈用剤
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ニカルジピン塩酸塩錠20mg「ツルハラ」 ジェネリック
血圧降下剤
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アルダクトンA細粒10%
利尿剤
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エナラプリルマレイン酸塩錠2.5mg「JG」 ジェネリック
血圧降下剤
・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。
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コラム白衣高血圧と仮面高血圧
白衣高血圧
医師の前では、精神的緊張のために血圧が上昇しがちです。このように、普段は正常血圧なのに診察室でだけ高血圧の基準を満たす状態を白衣高血圧と呼びます。携帯型24時間血圧計あるいは家庭血圧(コラム)の測定により白衣高血圧か本来の高血圧かが鑑別可能です。
白衣高血圧自体は病気というより一種の現象で、多くの場合は脳卒中や心筋梗塞など高血圧性臓器障害にもつながりにくいとされています。したがって、高血圧を指摘された場合、とくに軽症の場合には、安易に降圧薬の服用を開始するのでなく、別の機会にも血圧を測定して白衣高血圧かどうかを確認することが必要です。
ただし、白衣高血圧の人は将来本当の高血圧になりやすいという研究もあり、減塩など生活習慣の見直しはするべきでしょう。また、普段の血圧も高く診察室ではさらに上昇する"白衣効果"がみられる高血圧の場合には、ストレスで血圧が上がりやすいことを意味し、心血管病に関係する現象として注意が必要です。
仮面高血圧
白衣高血圧とはまったく逆のパターンで、診察室での測定では正常なのに対し、早朝や夜間、ストレスがかかった時に血圧が上昇します。仮面高血圧は、代謝異常(肥満、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドロームなど)を伴いやすく、心臓や頸動脈に高血圧性の臓器障害を発症している危険性があるとされています。正常血圧の人に比べ、心臓血管病の発症の危険性が2~3倍あるといわれています。
仮面高血圧には、携帯型24時間血圧計あるいは家庭血圧の測定が非常に重要です。早朝高血圧や夜間高血圧は積極的に治療を行う対象となります。
高血圧症に関する病院口コミ
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患者が聞きたいことに丁寧に答えてくれるお医者さんだと思いました
ぼくちゃんさん 50代以上男性 2017年07月21日投稿
高血圧症が長く最近狭心症の診察を受け他の病院で薬を処方されています。 今回訪れたのは血液検査をしてもらうためです。 糖尿病の数値が高いため生活習慣を見直し、減量している最中なので問題の数値の経過を自… 続きをみる
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優しく親切な先生で、様々な病気を治してくれます
患者さんの声さん 50代以上男性 2017年06月27日投稿
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