膿胸
のうきょう
膿胸とは?
どんな病気か
胸膜の感染症により、胸腔内に膿性の液体がたまったものです。
原因は何か
肺炎や肺膿瘍が胸膜に広がり、細菌が胸腔内に侵入して発症することが多く、起炎菌としては、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、ストレプトコッカスミレリ、嫌気性菌などが頻度の高いものです。
高齢で寝たきりの人に発症しやすく、口腔内の細菌が肺内に流れ込みやすいのがその理由です。
原因が肺結核の場合は結核性膿胸であり、年余にわたって膿がたまり、慢性膿胸と呼ばれる病態を示すことがあります。
症状の現れ方
発熱、胸痛(深呼吸や咳で増悪するのが特徴)、咳などの症状が現れます。胸腔内の膿が肺内にもれると、膿性痰が吐き出されます。膿が大量にたまってくると呼吸困難を自覚するようになります。
慢性膿胸では、年余にわたって無症状のこともあります。
検査と診断
胸部X線検査で胸水がたまった像を認め、胸腔穿刺(針を刺す)により膿性の胸水が採取されれば膿胸と診断されます。しかし、慢性膿胸では胸水も膿性ではなく、褐色を示します。
採取された胸水の培養により、起炎菌が決定されます。
血液検査では、白血球増加、CRP高値、赤沈促進などの炎症所見の亢進が認められます。
治療の方法
カルバペネムという強力な抗菌薬が投与されます。また、クリンダマイシンという嫌気性菌に優れた抗菌力をもつ抗菌薬が併用されることもあります。
膿胸の治療では、全身的な抗菌薬の投与と同時に、胸腔内の膿性胸水を排除することが重要です。胸腔内にチューブを留置し、持続的に排液します。胸腔内を生理食塩水で洗浄したり、アミノグリコシドなどの抗菌薬を注入することもあります。
これらの治療により、多くは2~3週間で治癒します。
慢性膿胸では、内科的治療のみでは治癒させることが困難であり、多くの患者さんでは外科的治療が必要になります。基質化して厚くなった胸膜の剥皮術や、膿胸腔を縮小、閉鎖するための胸郭形成術が行われます。
病気に気づいたらどうする
深呼吸や咳で増悪する胸痛を自覚し、発熱もあれば、早めに内科を受診します。高齢で寝たきりの人が発熱や胸痛を訴えた場合は、家族の方は患者さんを病院に連れていったほうがよいでしょう。
膿胸に関連する可能性がある薬
医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、膿胸に関連する可能性がある薬を紹介しています。
処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。
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テイコプラニン点滴静注用200mg「日医工」 ジェネリック
主としてグラム陽性菌に作用するもの
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メロペネム点滴静注用0.5g「日医工」 ジェネリック
主としてグラム陽性・陰性菌に作用するもの
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エリスロシン錠100mg
主としてグラム陽性菌,マイコプラズマに作用するもの
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セフメタゾールナトリウム静注用0.5g「日医工」
主としてグラム陽性・陰性菌に作用するもの
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セフォチアム静注用1gバッグ「日医工」
主としてグラム陽性・陰性菌に作用するもの
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エリスロマイシン錠200mg「サワイ」 ジェネリック
主としてグラム陽性菌,マイコプラズマに作用するもの
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セファゾリンナトリウム注射用0.25g「日医工」
主としてグラム陽性・陰性菌に作用するもの
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セファゾリンNa点滴静注用1gバッグ「NP」
主としてグラム陽性・陰性菌に作用するもの
・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。
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コラム血胸
胸腔内に出血し、血液がたまった状態をいいます。
原因には、外傷性と非外傷性があります。外傷性は、肋間動脈、内胸動脈などの胸壁の血管、横隔膜の血管、肺実質などが損傷を受けて出血する場合です。非外傷性では、気胸(胸壁と癒着している索状組織がはがれるため)、悪性腫瘍、大動脈瘤の破裂、肺梗塞などが原因となります。
外傷によって肺実質が損傷を受けると、血痰や喀血を伴います。出血量が多いとショック状態に陥ることもあります。
治療は、胸腔ドレナージにより血液を排除します。出血が続く場合には手術を行うこともあります。
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