出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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認知症とは?

 認知症でいちばん目につくのは「物忘れ」です。とくに認知症の初期には、最近の出来事が思い出せなくなります。食事をしたばかりなのに、また食事を催促することがあります。

 そして認知症が進行すると、昔の出来事、言葉や諺の意味がわからなくなり、その状況に適した行為、場所や人の識別ができないなどの高次脳機能障害(コラム)が現れます。

 認知症を診断するのは容易ではありません。新しいことが覚えにくいなどの記憶障害は、高齢者のほぼ全員にみられるものです。ただし、年相応を越えた顕著な記憶障害は問題です。そのなかには記憶障害だけしか異常のない軽度認知障害があります。その一部(1年で8人に1人の割合)が認知症に進行するといわれています。

 過度の飲酒、薬物によるものや一時的な健忘症は、飲酒や薬を中止するとか、時がくれば元にもどります。急に起こる記憶障害や軽い意識障害が頭の打撲や全身疾患によって起こることがあります。うつ病や妄想性障害など、脳の形の正常な機能性脳障害も認知症ではありません(図20図20 認知症の診断方法)。

図20 認知症の診断方法

 認知症は器質性疾患と呼び、脳が形のうえで異常になります。それ以外に、甲状腺ホルモンやビタミン欠乏など全身の病気でも認知機能は低下し、広い意味で認知症に加えます。

 表3表3 認知症を起こす病気に示すように、認知症を起こす病気には多くのものがありますので、どの病気によって認知症が起きたのかを診断するのはとても重要なことです。なぜなら原因となった病気によって治療法が異なり、なかには治りやすい病気もあるからです。医師は臨床検査などにより病気を診断して、治療の手がかりにします。

表3 認知症を起こす病気

 さらに、病名だけでなく、認知症の程度(軽度・中等度・高度)や患者さんが示す異常の特徴についても検討します。それらを明らかにすることが治療や介護を行ううえで大切です。

(執筆者:洛和会京都治験・臨床研究支援センター所長 中村 重信)

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コラム高次脳機能障害

洛和会京都治験・臨床研究支援センター所長 中村重信

 人が人間らしさを発揮できる所以が高次脳機能です。人の脳には、下等な動物にもある呼吸など生命維持に必要な部分や運動や感覚に必要な部分に加えて、物を覚えるとか判断するという高度の機能と関係した新しい部分があります。これら、人にしか存在しない部位が障害されると高次脳機能障害が起こります。

 高次脳機能の中心は認知機能です。認知症では認知機能などの高次脳機能が障害されます。なかでも記憶障害(物忘れ)がいちばん目立ちますが、それ以外にもさまざまの高次脳機能が障害されます。記憶障害以外の高次脳機能障害として認知症の人でみられる症状を次に示します。

①失語:発声、聴覚は正常なのに、言葉が出てこない、理解できない。

②失行:手足は動くのに、適切な行動(挨拶・手招きなど)ができない。

③失認:感覚的には感知できるが、それが何であるかを判断できない。

④実行機能障害:諺の意味の説明や言葉の概念が言い表せないとか、計画の実行がうまくできない。

 それ以外にも、判断力、問題解決、社会適応などの重要な高次脳機能もあります。ただ、記憶障害がなく失語のみを示す人もあります。したがって、高次脳機能障害のほうが、認知症よりも多くの病的な精神状態を含んでいるといえます。

認知症とはに関する医師Q&A