出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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エイズの肛門病変
えいずのこうもんびょうへん

エイズの肛門病変とは?

どんな病気か

 エイズは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染症です。発症すると生体の感染防御能力を低下させ、自己免疫機構の中枢であるCD4陽性Tリンパ球数(正常は800/μL)を減少させて、さまざまな日和見感染症を引き起こします。

 HIV感染者の85~90%の人が、約10年でエイズを発症します。感染者の25%が死亡しています。

 診断は、発熱、咽頭痛、発疹などの初感染期症状と、HIV抗原・抗体検査の組み合わせで行います。

 エイズによる肛門病変としては、①日和見感染病変、②腫瘍性病変があります。①にはウイルス性、細菌性(梅毒)、原虫性(アメーバ赤痢)、②にはカポジ肉腫、悪性リンパ腫など複数の感染症が混在しています。具体的には痔瘻尖圭コンジローマ、梅毒性肛門周囲潰瘍、悪性リンパ腫、アメーバ症などです。

原因は何か

 ほとんどがHIV感染者との性的交渉が感染原因になっています。

症状の現れ方

 日和見感染症としては、CD4陽性Tリンパ球が500~200/μL前後では、口腔内カンジダ症、カポジ肉腫、トキソプラズマ症を発症します。200/μL以下でカンジダ食道炎、カリニ肺炎、単純ヘルペス腸結核悪性リンパ腫を発症し、75~50/μL以下では非定型抗酸菌症サイトメガロウイルス感染症が合併しやすくなります。

 エイズでは不明熱、慢性下痢、体重減少が特徴的な症状ですから、下痢による肛門周囲膿瘍は要注意です。

治療の方法

 免疫の目安であるCD4陽性細胞数が200~300/μLになったら、抗HIV療法を開始します。基本的にはヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬2剤とプロテアーゼ阻害薬1剤を併用し、長期間継続します。最近は多剤併用療法(HAART)によって、感染症の予後はかなり改善され、死亡者は減少し、治るようになってきました。

 肛門病変は手術することもあります。

エイズの肛門病変と関連する症状・病気

(執筆者:特定医療法人社団松愛会松田病院理事長・院長 松田 保秀)

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