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[患者さんの相談事例] 2012/01/20[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

紹介された大病院での治療で危篤状態に。「心配は無用」と言われたのに「合併症はミスではない」と。納得できません。(68歳・女性)

 妻が動悸と息苦しさを訴え、近くにある循環器専門クリニックを受診しました。重い不整脈を起こしていると診断され、「不整脈の原因になっている心臓の部位に高周波を当てるカテーテルアブレーションという治療があって、それを受ければ治る可能性が高いと思います。2週間程度の入院で済むので、治療ができる病院を紹介します」と大きな病院への紹介状を書いてくれました。紹介先の病院でもカテーテル治療を勧められ、「治療に関する説明文書がありますので、念のために読んでおいてください。いまはマイナス情報も事前に伝えておかないといけないので、怖い合併症も記載されていますが、経験を積んで安定した成績を残している治療方法なので心配は無用です」と言われました。その言葉に安心し、妻も治療に同意したのです。
 ところが実際にカテーテルアブレーション治療を受けた結果、カテーテルによって心臓に穴が開き、大量出血を起こしました。何とか危篤状態は脱したものの、その後も大腸や小腸に炎症が起きるなど不安定な容態が続きました。
 妻は以前から血栓ができやすいと言われて抗凝固剤を飲んでいたのですが、カテーテル治療の直前に「出血しやすくなるから」と服用を中止していました。私は、その薬が止まったままになっているのが心配だったのですが、「炎症を起こしている腸から出血する可能性が高くなる」と再開してもらえませんでした。ところが案の定、血栓ができて脳の血管に飛んでしまい、入院中に妻は脳梗塞を起こしたのです。3ヵ月経ったいまでは、全身が麻痺した状態で、寝たきりになっています。食事は多少口から摂ることはできますが、点滴による中心静脈栄養に頼っている状態です。
 脳梗塞になるまでは、「必ず回復して退院していただきますから」とドクターは言っていたのですが、いまはそのことに触れようとしません。そればかりか、「カテーテル治療の前に渡した文書に書いてあったように、心臓に穴が開いたのは合併症なのです。合併症というのは一定の割合で起きるので、ミスではありません」と責任を回避するようなことばかり言います。治療前に「怖い合併症の心配は無用」と言ったことなど忘れているかのような態度です。
 そこで、紹介してくれたクリニックに相談したのですが、「合併症はどうしても一定の確率で起こりますからね……。お気の毒ですが、病院のミスを問うのは難しいでしょう」と言われました。そんな合併症があるなんて、紹介するときはまったく言わなかったのに、あまりにも無責任です。治療を受けたばかりに変わり果てた姿になってしまった妻が不憫でなりません。ミスと認めさせるには、どうしたらいいのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 おそらくドクターは、合併症のようなマイナス情報を強調しすぎると怖がって治療を受けなくなるのではとの懸念から、「心配しなくていい」と言葉を添えたのでしょう。また、実際に後遺症が残るような合併症が起きる確率も、一般的には1パーセント未満とされているようですから、「まずは起きないだろう」という思いもあったのかもしれません。しかし、実際に起きてしまうと、患者にとっては“確率”ではなく“現実”の問題になってしまいますから、「こんなはずではなかった」と納得できない気持ちになるのだと思います。
 「心配ない」という言葉が添えられていたとしても、合併症の可能性が文書で示されている以上、起きる可能性があると事前に聞かされていたことになります。治療を受ける同意をした段階で、その危険性も引き受けたとみなされる厳しい時代です。
 そのような医療の不確実性と限界は踏まえなければなりませんが、やはり納得できるまで説明を求めることは大切です。これまでの経緯や今後の治療方針、病院側の意見など、十分納得できていない部分については再度説明を求めてみてはいかがでしょうか。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 患者側はドクターから投げかけられた安心する言葉に敏感ですから、「心配は無用です」と言われた“ひとこと”はよく記憶しています。ですから、実際に合併症が生じて、「説明したはず。合併症だからミスではない」と言われると、納得いかない気持ちになってしまうのも当然だと思います。
 患者はどうしても結果から物事を考えがちなので、マイナス事象が起きれば「どうして事前に十分そのことに触れてくれなかったのか」となりますし、事前にマイナス事象ばかりを強調されると「脅かされているようで怖い」という不満につながります。それだけに、強く強調しないまでも、「可能性は少ないのですが絶対に起きないとは言えないので、そのような合併症があるということは了解しておいてください」といった説明は不可欠ではないかと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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