出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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脂質異常症(高脂血症)
ししついじょうしょう(こうしけつしょう)

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脂質異常症(高脂血症)とは?

どんな病気か

 血中のコレステロールやトリグリセリド(中性脂肪)が増加する状態を高脂血症といいます。高脂血症は動脈硬化の原因となりますが、血中のコレステロールには次に述べるように善玉といわれるHDLというリポ蛋白に運ばれているものがあります。このコレステロールは少ないほう(すなわち低HDLコレステロール血症)が動脈硬化を起こしやすいので、高脂血症という病名は不適切ではないかと以前からいわれていました。そこで、日本動脈硬化学会では2007年から低HDLコレステロール血症を含めた血中脂質の異常を、脂質異常症と変更しました。

 コレステロールもトリグリセリドも水に溶けないので、特殊な蛋白質(アポ蛋白と呼ばれている)に付着して血液中を運ばれています。このコレステロールやトリグリセリドとアポ蛋白の複合体をリポ蛋白といいます。

 リポ蛋白にはいくつかの種類があり、比重によりVLDL(超低比重リポ蛋白)、LDL(低比重リポ蛋白)、HDL(高比重リポ蛋白)などに分類されています。コレステロールには善玉と悪玉があるといわれますが、コレステロールに違いがあるのではなく、どのリポ蛋白によって運ばれているのかの違いによるものです。

 LDLは血管壁に取り込まれて蓄積し動脈硬化を起こすので、LDLコレステロールを悪玉コレステロールと呼びます。逆に、HDLは血管や組織に蓄積したコレステロールを引き抜いて運ぶリポ蛋白なので、HDLコレステロールを善玉コレステロールと呼んでいます。トリグリセリドは主にVLDLによって運ばれています。

 血中のLDLコレステロールやトリグリセリドが増加すると動脈硬化が起こりやすくなります。とくに家族性高脂血症では狭心症心筋梗塞を起こす危険が非常に高いことが知られています。また先に述べたように、HDLコレステロールは少ないほうが動脈硬化を起こしやすくなります。

原因は何か

 一般には、高カロリー高脂肪の食事と運動不足などの生活習慣が一番多い原因です。しかし、遺伝性の脂質異常症も知られています。なかでも家族性高コレステロール血症は日本人では500人に1人の高い頻度でみられる遺伝性の疾患です。そのほかにも家族性複合型高脂血症、家族性III型高脂血症などの遺伝性高脂血症があります。遺伝性の低HDL血症もありますが、極めてまれですので一般には心配する必要はありません。

症状の現れ方

 多くの場合、症状はないので、血液検査で初めてわかることがほとんどです。家族性高コレステロール血症ではアキレス腱肥厚、腱黄色腫(手の甲、肘、膝の腱にできる硬い盛り上がり)、眼瞼黄色腫(まぶたにできる黄色い斑点状の盛り上がり)、角膜輪(黒目の周囲にできる白い輪)がみられることがあります。

 とくにアキレス腱肥厚は最も多くみられる症状で、アキレス腱の厚みが1cm以上あって血中コレステロール値の高い場合は、家族性高コレステロール血症である可能性が高いと考えられます。家族性III型高脂血症でも典型的な場合は、腱黄色腫や手掌線状黄色腫(手筋が黄色く盛り上がる)ができます。

検査と診断

 血液検査で血中のコレステロール、トリグリセリド、HDLコレステロールの値を測定します。朝食前の空腹時に採血します。悪玉と呼ばれるLDLコレステロールの値はこれらから計算することもできますが、直接、測定する方法もあります。脂質異常症の診断基準は表20表20 脂質異常症の診断基準(血清脂質値:空腹時採血)に示すとおりです。

表20 脂質異常症の診断基準(血清脂質値:空腹時採血)

治療の方法

 脂質異常症を治療する目的は動脈硬化の予防なので、禁煙など、脂質異常症以外の動脈硬化危険因子の治療を同時に行うことが重要です。また、治療の目標値も他の危険因子をいくつもっているかにより異なります(表21表21 危険因子の数による血清脂質目標値)。

表21 危険因子の数による血清脂質目標値

 脂質異常症の原因の多くは生活習慣なので、その改善が第一です。食事療法は血清脂質の是正とともに冠動脈硬化の危険因子である糖尿病高血圧、肥満の治療も目的とするものです。まず、第一段階では、総エネルギーとともに栄養素配分を適正化します(表22表22 脂質異常症での食事療法の基準(1日あたり))。この食事療法で目標値にならない場合はより厳しい食事療法を行う必要があるので、医師や栄養士に相談します。

表22 脂質異常症での食事療法の基準(1日あたり)

 適正体重の維持(体重kg/(身長m)の2乗=22を標準とする)、腹囲の適正化(男性85cm未満、女性90cm未満)、身体活動の増加(速歩、ジョギング、水泳、サイクリングなどを1日30~60分、週3回以上)も重要です。

 生活習慣の是正を3~6カ月続けても目標値に達しない場合は薬物療法を行います。ただし家族性高脂血症は早くから薬物療法を行う必要があります。

 現在、脂質異常症治療薬(高脂血症薬)にはいくつかの種類がありますが、高コレステロール血症にはHMG-CoA還元酵素阻害薬(一般にスタチンと呼ばれている)が最も多く使われています。この種類の薬はコレステロールの合成を抑制するものです。その他にもコレステロールの吸収阻害薬やレジンと呼ばれる陰イオン交換樹脂やプロブコール、ニコチン酸誘導体も使われます。

 高トリグリセリド血症にはフィブラート系薬物のベザフィブラートやフェノフィブラートが有効です。また、EPA(エイコサペント酸エチル)はトリグリセリドを下げる薬ですが、血管に直接はたらいて抗動脈硬化作用を示すともいわれています。

 これらの薬はいずれも副作用は比較的少ないものですが、まれに筋肉や肝臓の障害などを起こすことがあるので、医師の指示に従ってきちんと服用してください。

病気に気づいたらどうする

 脂質異常症は、動脈硬化の予防が目的です。無症状であっても正しい治療が必要なので、自己判断せずに医療機関に相談してください。一般内科あるいは内分泌・代謝科が担当の診療科です。

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(執筆者:自治医科大学附属さいたま医療センター長 川上 正舒)

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高脂血症に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、高脂血症に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

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