出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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慢性腎不全
まんせいじんふぜん

慢性腎不全とは?

高齢者での特殊事情

 急性腎不全と同様に自覚症状に乏しく、また、この病気に特有な症状はありません。

 血清クレアチニン(Cr)値は腎機能だけでなく筋肉量にも関係しますが、高齢者では一般的に筋肉量が少ないので、腎機能低下のわりには血清クレアチニンが低値にとどまることが多くみられます。若年者と比較して栄養状態が悪く、蛋白分解による異化も亢進し、尿素窒素(BUN)が高い場合が多いことにも留意する必要があります。

診断

 慢性腎不全の進行度は、糖尿病性腎症では早く、良性腎硬化症ではゆるやかであることも診断にあたっては参考にすべきです。腎不全の診断は、高窒素血症の状態をどのように判断するかによりますが、前項の急性腎不全と同様に、腎機能の評価はBUN、Crではなく、可能なかぎりクレアチニン・クリアランスで評価すべきです。最近は、年齢と性別を考慮した推算糸球体濾過率で判定することが多くなっています。

治療とケアのポイント

 食事療法は、蛋白制限(0・6g/kg以下)とカリウム制限(1500mg以下)が重要です。薬物療法として、糖尿病性腎症やIgA腎症ではアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬が腎保護作用を示すので、少量から慎重に投与します。また、血清クレアチニン値が2mg/dL以上であれば、サイアザイド系利尿薬は使わないで、ループ利尿薬を使います。

 透析導入後は、合併症防止と日常生活動作(ADL)、生活の質(QOL)の維持、社会生活復帰が主体になります。したがって、食事療法も各種の制限は緩和されます。蛋白制限は血液透析(HD)で体重1kgあたり1・0~1・2g、腹膜透析(CAPD)では1・1~1・3gとなります。カリウム制限は、HDでは1500mg以下と薬物療法が必要ない保存期腎不全と同じですが、CAPDでは2000~2500mgに緩和されます。

 薬物療法は500mlの利尿が保持されていれば、体液管理の目的でループ利尿薬を使用します。

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(執筆者:札幌医科大学学長 島本 和明)

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